徒然日記 〜日々出会う本や映画〜

ミュージカル『二都物語』明治座観劇と大千穐楽配信を振り返り(ネタバレあり)

5月27日に明治座で、ミュージカル『二都物語』を観劇しました。

『二都物語』はディケンズの長編小説ですが、私は小説も読んでなくて全くの初見。観に行くか迷っていましたが、12年ぶりというかなり間を空けた再演で、TBSラジオ「井上芳雄のByMYSELF」とポッドキャスト「浦井健治のココバナカフェ」を毎週聴いている身としては、芳雄さんとけんちゃんお二人の出演とあればやっぱりこれは観たいなと。

迷っていたので初日開けてから、東宝さんのサイトでチケットを購入。二階上手側の注釈付き席(一部見えない)でしたが、舞台に近く、表情もとてもよく見えました。また、フルオケだったからか音の偏りも感じず、良きお席でした^ ^


そして本日7月13日は、このミュージカル『二都物語』が博多座で大千穐楽。

東京の明治座から始まり、大阪、名古屋、そして博多へ。全64公演の公演をシングルキャストで無事に完走できるって、役者陣は身体やメンタルをどうやって整えているのだろうと思う。無事の完走、本当におめでとうございます!!

大千穐楽はライブ配信があり(しかも20日までアーカイブ視聴可)、チケットを買って自分のお部屋でゆっくりリアルタイムで視聴しました。

余韻に浸ったまま、明治座での観劇と配信視聴を含めて、観劇録を書いてみたいと思います。というわけでここから

ネタバレします!

気にせず書きます!!

ご注意くださいね♪^^

ミュージカル『二都物語』まずストーリーはこちら。

18世紀後半、イギリスに住むルーシー・マネット(潤 花)は、17年間バスティーユに投獄されていた父ドクター・マネット(福井晶一)が酒屋の経営者ドファルジュ夫妻(橋本さとし/未来優希)に保護されていると知り、パリへ向かう。無事に再会し父娘でロンドンへの帰途の最中、フランスの亡命貴族チャールズ・ダーニー(浦井健治)と出会うが彼はスパイ容疑で裁判に掛けられてしまう。そのピンチを救ったのはダーニーと瓜二つの酒浸りの弁護士シドニー・カートン(井上芳雄)。3人は親交を深め、ダーニーとルーシーは結婚を誓い合う仲になる。カートンも密かにルーシーを愛していたが、2人を想い身を引く。穏やかな暮らしが続くかに見えたが、ダーニーは昔の使用人の危機を救おうと祖国フランスに戻り、フランス革命により蜂起した民衆たちに捕えられてしまう。再び裁判に掛けられたダーニーだったが、そこで驚くべき罪が判明し、下された判決は死刑。ダーニーとルーシーの幸せを願うカートンはある決心をし、ダーニーが捕えられている牢獄へと向かう――。

ミュージカル二都物語 公式サイト STORYより https://www.tohostage.com/ataleoftwocities/

時代的には「レ・ミゼラブル」や「ベルサイユのばら」と重なり、フランス革命を背景に進む物語。

井上芳雄さんによると、原作はミュージカル版とはだいぶ違うよう。原作は新聞連載だったので、当時の世相の描写が多かったり、カートンがなかなか出てこないらしい。ミュージカル版は、シドニー・カートンにグッとフォーカスした脚本になっています。

全体を通して美しくて感動的な楽曲が多いのですが、私は一幕で井上芳雄さんが歌うソロ「この星空」が一番好き。人生投げやりで酒浸りなイギリス人弁護士 シドニー・カートン(井上芳雄)が、それまでずっと酔っ払ってフラフラだったところ、ルーシー(潤花)と出会い、彼女の愛に触れ、目を覚ましてゆく。

「この星空」では美しい星空に気づき、「人生は美しい」と歌い上げるのですが、劇場全体が芳雄さんの声で満ち満ちていました。満ち満ちの響きに身を委ね、至福のひとときでした。配信でも再び、芳雄さんの全てを包み込むような歌声を感じられて、劇場で観劇したときの感動が蘇りました。

「ルーシー(潤花)と出会い、彼女の愛に触れ」と書きましたけれど、ここでの「愛」は恋愛ではないんですね。ルーシーは父マネットや幼い頃から世話をしてくれたミス・プロス、自身のまわりの全ての人にあたたかな愛を表現できる人。純粋で美しくて、その愛を誰も所有も支配もできない感じ。でも聖女とは違って人間らしく、絶妙なキャラ。このルーシーという人を、説得力を持って演じられる潤花さん、ぴったりの配役でした。

カートンが自分がルーシーを愛していることを認められるようになって、彼女に告白したとき。その時には浦井健治さん演じるチャールズ・ダーニーが彼女に既に求婚し、YESの返事をもらった後でした。浦井健治さんは、劇団☆新感線の五右衛門シリーズで、シャルルという天然でウザさ全開の王子役を見て以来。マジで美しくてカッコいい浦井さんを初めて見れました笑

ここまで書くと、ルーシーをめぐるカートンとダーニーの三角関係のお話のようですが、それはお話の触りだけ。

結婚して娘が生まれたルーシーとダーニーを、カートンはずっと友人として付き合っていきます。娘ちゃんはカートンにとっても懐き、カートンが彼女を寝かしつけ、一緒にお祈りをしたりする。

幸せな家庭を築きつつあったダーニーのもとに、故郷フランスの使用人から叔父のエヴレモンド公爵が殺され自身も囚われ助けを求める手紙が届きます。ダーニーはその使用人だった友のためにフランスに戻りますが、その友は既に処刑された後だった。「ベルばら」で描かれた貴族の悪政とそれに苦しむ市民の物語かと思っていたら、このあたりからその様相は市民の暴徒化へと進みます。渡仏したダーニーは、イギリスに向かう前にとっくに財産放棄等していたものの、エヴレモンド侯爵家だったことで市民に囚われ、「共和国への罪」で死刑判決を受けます。家族のルーシーとその父マネットもパリに来て、なんとかダーニーを釈放してもらおうとしますが、なんならマネットその人を17年間バスティーユの囚われの身とし、ルーシーと別れ別れにさせたのはダーニーの叔父 エヴレモンド侯爵でした。

パリで途方に暮れるルーシーやマネットたちの前に、シドニー・カートンが現れます。「え?なんで?」「どうしてここに?」と登場人物たちも観客もびっくり笑

カートンは、ルーシーたち家族のために、自分がダーニーの身代わりになることを決意。バーサッドに協力させて面会と称して牢獄に入り込み、ダーニーを薬で眠らせ入れ替わります。カートンが事前に指示していた通り、ダーニーとルーシーは再会しイギリスへ出発。そして、代わりにカートンが処刑台に上がっていく。というのがこの物語のクライマックス。

こう書くと「愛するルーシーとその家族のために身を捧げる」聖人のようなカートンの決断と行動のようですが、それもどうも違う気がするのです。ダーニーの身代わりになる、という決断をするまでの、カートンの人間臭い葛藤もすごく良かった。そして最後、No.23カートンは同じく処刑判決を受けたNo.22公爵家のお針子だったクローダと出会います。彼女は身代わりになろうとしているカートンに驚きながらも理解します。「その時が来るまで手を握っていてほしい」という彼女の願いに、カートンは彼女が先に処刑台に歩き出すまで手を握り続けます。このシーンが私はツボで。。。観る度に泣く。。。

そしてカートン自身が、処刑台に階段を上がってく。このときの、カツカツ…という芳雄さんの足音を明治座で聴けたことも思い出します。

カートンは、ルーシーたちのために身代わりになりたかったのも事実だろうけれど、男女の愛を超えたところにたどり着いていたように思えてならないのです。

『二都物語』での「この星空」の歌を境に変化するカートンは、同じくディケンズ作品『クリスマス・キャロル』でのスクルージの一晩での変化と繋がります。

人生はいつでも変えられる/クリスマスキャロル全国ツアー2022観劇レポ こんにちは。上杉惠理子です。 これを書いているのは2022年12月24日。クリスマス・イブですね〜!! メリークリスマス!...

人は誰でも、いつでも、変わることができる、一瞬で。その人に、変わる決意さえあれば。

それが『クリスマス・キャロル』から受け取ったメッセージでした。

『二都物語』は、『クリスマス・キャロル』よりも後、ディケンズ後期の作品です。「人は変わることができる」というメッセージを含みながら、変わることができない/赦すことができない人間の苦しさも描いているのが『二都物語』でした。それは子どもの頃に姉と弟を侯爵に殺されたマダム・ドファルジュの終わらない復讐心に象徴されていました。マダム・ドファルジュを演じた未来優希さんは「しんどい役だった」と話していらっしゃいましたが、最初から最後に銃の暴発で死ぬまで、エヴレモンド侯爵家への怒りと憎しみを出し続けていました。座って編み物をしているときも、その感情を編み込み続けていたんですよね。

変わること。変わらないこと。
どちらも自分で選ぶことができる。本当は。

私が今日時点で受け取った『二都物語』のメッセージはここまでかな。


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