徒然日記 〜日々出会う本や映画〜

台湾ミュージカル『えがお、かして!』を観劇して


こんにちは。上杉惠理子です。

今日8月16日の午後、東京・下北沢の「小劇場B1」で、台湾オリジナルミュージカルを観てきました。

『えがお、かして! Broken Doll』
(台湾華語タイトル:《沒有臉的娃娃》)

■ 日程:2025年8月14日(木)~ 8月17日(日)※全4公演
■ 会場:下北沢 小劇場B1
※上演言語:台湾華語(日本語字幕付き)
公演詳細  :https://stage.corich.jp/stage/373624

2022年からすっかりファンになったゴツプロ!という劇団さんが、今回、この台湾の劇団さんの来日公演を企画されまして、それで知って観てきました。

台湾オリジナルミュージカルって聴いたことがなかったので、どんな感じなんだろう?と。

ストーリーはこちら

王曉天(ワン・シャウテン)は、生まれた時から「モービウス症候群」という希少疾患を抱えていました。

顔の神経が動かず、まばたきも、口をすぼめることもできません。

笑ったり泣いたり、彩りあるはずの子ども時代は色あせてしまったのです。

手術費用を稼ぐために懸命に働く父、

いじめから守るために戦う母、

両親を安心させようと背伸びする姉。

曉天は、家族を喜ばせたい一心で自分を責め続けます。

ある日、絶望の淵で出会った謎の少女に、彼は問います。

「もし僕が良くしようと努力しなくなったら、それでもみんなは僕を愛してくれますか?」

主役の男の子は、生まれたときから顔の筋肉が動かせない病気。

主役が、表情がない作品。これも象徴的。

でも、彼は全てを理解していて、見えないものも見える才を持っている。

個性とは何か。

偏見とは何か。

どうしたら偏見を生むものを、人は乗り越えられるのか。

舞台は台湾だし、セリフは台湾語で日本語字幕でしたが、すぐ近くにいそうなご家族。すごく普遍的な家族の物語だと感じました。

出演者は6人だけ、劇場のキャパも130人ほどの小劇場。

ですが歌もハーモニーが美しくて聴きごたえたっぷり。

客席は日本在住の台湾出身の方もいたのかなぁ〜客席の感情も伝わってくる熱い舞台でした。

めっちゃ良かった。

それでですね。ここからちょっとネタバレになります。すみません。

病気を持つ主人公の父は、手術費用を稼ぎたいと懸命に働き… ある日、交通事故にあって入院。話もできない状態になってしまうのです。

主人公、彼の母、そして姉。それぞれ辛い状況に陥ります。

そして、父本人の魂は、あの世の境にいる。

まだ今世に思いがある。

戻りたい、戻らせて、妻に子どもたちに伝えたいことがあると、もがくのですが、自分の肉体はもう死が確定している。

そこで、あの世の境で転生をガイドする存在が、父にこう言うんです。

(正確なセリフでとは違うかと。ご容赦ください!)

いやぁ、、20数年前に亡くなった自分の父を思い出しながら観ました。

いろいろなところで書いたり話したりしているのですが、私の父は2003年の年度末に大動脈解離という病気で、突然胸の痛みを感じて救急車を呼び入院。翌日に7時間の手術をしましたが、その麻酔から覚めることなく、半年後の秋分の日に亡くなりました。

昭和の雷親父だった人ですが、痛いのか苦しいのかも聞けず、寝たきりで足はあっという間に細くなり…でも、彼が52歳と若かったこともあり、家族も親戚も誰もそのまま逝ってしまうとは想像もしなかった。

今回の作品のように、父の魂はあの半年、死との狭間で葛藤をしたのかもしれない。

そこは想像もしたことがなかったので、ちょっともう、、涙目で観てましたし、すごく大事な視点をもらいました。

あぁ、、私にも、任されたことがきっとあるんだよな

私、お芝居とかミュージカルとか大好きなんですけど、人間って何なのか、なぜ人間は生きるのか、人生の試練はなぜあるのかなど、根本的に問い直すことができる場が舞台作品なのだと思うの。

お金は大事だけど、私たちは稼ぐために生きてるわけじゃないから。

『えがお、かして!』すごくいい作品でした。

ちょうど八月のお盆の時期なのもぴったりでした。

そして、日台交流としても素晴らしい企画でした。

台湾の役者さんが伝えてくれる、真っ直ぐでシンプルなメッセージに勇気づけられました。ほんっっとたくさんの人に観てほしいなぁ。。。と言っていると、翌日17日で千秋楽。

舞台は儚い。だからこそその瞬間のエネルギーがすごいんだなぁと改めて思います。

上杉惠理子